. シジュウカラの子育て .
2022/5/15-6/22
 我が家には、10年程前に取り付けた自作の巣箱がある。丘陵を開いた住宅地で庭木はあるが低木ばかりで、巣箱を取り付けるのに適した樹木がなく軒先が一番良さそうに思われた。環境的には、近くの公園や道路沿いに大きく育ったメイヨシノが沢山あり、南方向300〜1km程先に広くはないが雑木林もある。子育てに最適とは言えないが試しに取り付けてみた。3年目にシジュウカラが入居して子育てをしたが、巣箱前のムクゲが枯れたことが影響したのか7年間利用されることはなかった。毎年秋に巣箱内を掃除して期待していたが、シジュウカラの姿を見ることなく殆ど諦めていた。
2022年5月15日に巣箱横のガレージに梯子を掛けて屋根の塗装をしようと下処理をしていたところ、梯子の先にシジュウカラが来て「ピーツピ、ピーツピ」と鳴き声をあげている。「ここは俺の縄張りだ、あっちへ行けー!」と言っているように聞こえる。巣箱内に別の一羽が入っているようだ。前回より遅い時期で今から子育てをすると巣立ちは1か月以上先になり、屋根が熱くなって塗装ができなくなってしまうので作業を秋まで延期して見守ることにした。
 巣箱は部屋の窓から見えない位置にあり、戸外で巣箱を見ながら継続観察することはできない。通常は巣箱横の窓から巣箱に出入りする行動を見ていて巣箱付近を見たいときだけ玄関先の物陰から観察することにした。前回よりも時間的にゆとりがあるので、できる限り継続観察することにした。
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6/11 <雄(腹の黒い部分が太い)> 6/11 <雌(腹の黒い部分が細い)>
5/15 <ガレージの屋根上で作業していてシジュウカラに初めて出会う> ※以下親鳥の主な行動を<>に記載
(雌が巣作りをしているらしく、雄は梯子の先で縄張りを主張していたのだろう)
 ≪巣立ちから逆算して、この直後に産卵開始?≫
5/16 顔を出すシジュウカラ(白い頬の形状から雌と分かる)
5/24 ≪ このころに抱卵開始?≫
5/29〜6/3 <番のシジュウカラが巣箱前の庭木(サザンカ、マンサク、サルスベリ、ビワ)やガレージの樋に来て、1羽だけが巣箱に入っていく>
(シジュウカラの抱卵は雌だけがしていて、時々訪れた雄と一緒に食事に出かけていくようだ)
6/5 <2羽が巣箱に代わる代わる出入りしている>
<いきなり巣箱に入らずに庭木や樋にとまり周りを見てから入っていくことが多い>
≪雛への給餌は雌雄両方で行うのでこのころに孵化?≫
6/6〜6/18 <雌雄の2羽が10〜30分間隔で餌(青虫や芋虫)を運び込んでいる>
(巣を出て東方向や南方向へ向かうことが殆どで、100〜1km程先にある桜並木や雑木林が狩場なのかも?)
<出ていく時には、白い袋に包まれた糞をくわえていることが多く、離れたところへ捨てているようだ>
<日がたつに連れて餌や糞の袋も大きくなってきた>
<2羽が同時に飛来すると、何故か庭木や樋にとまった雌が翼を震わせるしぐさをして、雄が先に入り雄が出た後に雌が入る行動が見られる>  
<すぐに雄が来るのが分かっているのか雌が庭木にとまって巣に入らずに、暫く待って雄が来ると翼を震わせて雄が入るのを促すこともあった>
(「あなた先に入って頂戴」を言っているようで、理由は不明だが、夫婦間の微笑ましい心のやりとりを感じさせる)
6/19 <人が近くにいると「ピーツピ」、「ピーツピジジジジ」と鳴いた後、巣箱に入る行動が見られるようになった>
(警戒する鳴き声を雛に伝えているようにも思える)
6/20
(晴れ)
<巣箱正面のサルスベリにとまった親鳥(雌?)が餌をくわえたまま「ピーツピ、ジジジジ」鳴いた後、巣に入るが餌をくわえたままサルスベリに戻って鳴いている>
(餌をくわえた状態でも大きな声で鳴くことができるようだ)
(雛に巣立ちを促す親鳥の行動が始まったと思われる)
14:55 親鳥が庭木で鳴いた後に、巣箱から黄色いくちばしの雛が顔を出したが引っ込んでしまう 
(この日は巣立ちを確認できなかった)  
6/21
(曇り時々小雨)
<1時間に8回ぐらいの頻度で餌を運び込んでいる>
(連続して観察しているわけではないが、目立った動きはなかった)
<巣を出た雄が数十m先のテレビアンテナに止まり、雌が来るのを待って一緒に餌探しに向かうこともあった>
(まるで雌雄2羽が会話しながら行動しているように思える)
6/10 餌をくわえた雌(サルスベリにとまってから巣へ向かう) 6/10 糞の入った白い袋を運び出す
6/11 餌をくわえた雄(樋にとまってから巣へ向かう) 6/16 餌をくわえて翼を震わせる雌(この後雄が先に巣へ入る)
6/20 餌の青虫をくわえた雌(餌が大きくなっている) 6/20 巣箱前のサルスベリにとまって鳴く親鳥
6/20 14:55 外をうかがう雛 6/21 アンテナにとまって雌が来るのを待つ雄
 
≪巣立ち≫            
6/22
(小雨)
(昨日は巣立ちの動きがなかったので、可能性濃厚と見てできるだけ張り付いて観察した)
<朝から頻繁に雌雄2羽が餌をくわえて巣へ入り糞をくわえて出ていく>
7:32 雛が顔を出したがすぐ引っ込んでしまう
<雌が庭木で餌なしで「ツピーツピー」と鳴いた後と巣へ入り、すぐに出てきて庭木で鳴く行動が見られる>

(9:30頃に巣が見える玄関へ移動)
<雌が餌なしでサルスベリで鳴いた後巣へ入るが、すぐ出てサルスベリへ戻る>
10:36 雛が出て東側の庭木へ 
10:37 サルスベリで雌が鳴いた後、更に雛が巣箱前のマンサクへ飛び移り東側へ移動
<サルスベリにいた雌が東側の電柱の支線にとまり鳴いている>
(近くの庭木か雑木に雛がいるのかも?)

<雌がサルスベリに来て鳴いている>
10:47 巣に入った雄が糞をくわえて飛び去った後、雛が顔を出すが引っ込む
<サルスベリにいた雌が巣に顔を入れただけで、サルスベリに戻り何度もツピーツピーと鳴いて飛び去る>(雨が小降りに)
<雌が巣に顔を入れただけでサルスベリに戻って鳴いた後、巣へ入って糞をくわえて飛び去る>
(雌が繰り返し鳴いて巣立ちを促すのに比べて、雄は黙々と餌を運び込み糞を持ち出している感じ…)

11:22 30分以上も雛が顔を出したり引っ込んだりしている
11:28 サザンカの根元の地面に雛がいるのを発見(目を離した隙に飛び出したのかも?)

<餌をくわえて戻ってきた雌が巣箱に顔を入れただけで、入口や樋で鳴いている>
11:30 雛が顔を出す
11:35 雌が樋やサルスベリで鳴き飛び去った後、雛がマンサクへ飛び移る、近くのサザンカに別の雛(地面にいた雛?)もいる
11:37 サザンカの雛が30m程離れたアパート壁面へ張り付きその後不明
<サルスベリに戻ってきた雌が巣箱を覗くが入らずに南方向へ>
<小餌をくわえた雌が樋→サルスベリ→樋→巣箱と移動、巣箱から出てサルスベリで鳴いた後東方向へ
(雌は餌や鳴き声で巣立ちを促すのに必死になっている感じだ)

11:43ー50 雛が半身乗り出すが引っ込む 
<小餌をくわえた雌が樋→サルスベリ→樋→巣入口→樋へと動き鳴き声をあげる、東方向へ去るがすぐ戻る>
<雛が引っ込んだ後、雌が飛来し糞を持ち出してからは親鳥のこれまでの行動が嘘のように全く動きなし>
(40分程経過しても動きがないので巣立ちに気付かなかったと思い、梯子を掛けて巣箱を覗いたら1羽いてびっくり!)

<雛を見た10分後に雌が餌なしで来て、サルスベリ→樋→巣箱横→サルスベリと落ち着きなく動き回り人の気配で西方向へ>
<雌が餌なしで来て、巣に入らずにマンサクの枝を移動しながら鳴いた後西方向へ> 
13:36 雌が去った後、雛が出てサザンカの茂みへ
<雌雄2羽が飛来し、雄は巣箱へ入った後すぐに出て西方向へ、雌はサザンカの雛と合流(給餌?)するがどこかへ>

<樋へ飛来した雌が巣箱に入るが、すぐに出てマンサクへ移った後西方向へ>
<マンサクに2羽を見たがすぐにどこかへ、確認出来なかったが一方は雛だったかも?>
(雛が巣立つ前は親鳥が殆ど東か南へ飛び去っていたが、この日は西方向へ飛び去る行動が目立つ)

15:33 雛がサザンカの茂みから地面、ビワへと移動  
<サルスベリに雌?が飛来したがすぐどこかへ>
16:04 ビワからガレージ屋根へ移った雛が30m程離れたアパート壁面へ張り付いた後西方向へ
<サルスベリに飛来した雄が巣に入るが、すぐに出てビワの木へ移り西方向へ>

(最後の雛が移動した後は巣箱前の庭木内に雛の気配なし)
(我が家から少し離れた西方にも少しの雑木や桜の木があるので雛が集まっているかもしれない?) 
(親鳥が巣箱を覗いたり庭木で鳴いたりする姿も見られなくなった)
6/23 <午前中に一度巣箱前のサルスベリに雌が来ていたがその後は見掛けず>
(後日、巣箱内を調べたところ、厚さ3cm程の苔と獣毛の布団上には殻も含めて雛の面影を感じる物は全くなかった)
 
6/22 7:32 顔を出し外をうかがう雛(庭に設置した手鏡) 6/22 10:32 サルスベリにとまって鳴く雌(餌なし)、10:36に雛が出て東方向へ
6/22 10:37 サルスベリにとまり鳴き声をあげる雌(餌なし)) 6/22 10:37 飛び立とうとする雛(この後巣の前のマンサクへ→東方向へ)
6/22 10:39 南東20mの電柱の支線(過去にとまったのを見てない)で鳴く雌 6/22 10:40 サルスベリにとまって鳴く雌(餌なし)
6/22 10:47-11:22 何度も顔を出したり引っ込んだりしている雛 6/22 10:55 入口で鳴いたり覗き込んだりして巣立ちを促している
6/22 11:24 餌をくわえた雌が枝→樋→巣入口→樋→巣箱内へ、糞を喰えて南東へ 6/22 11:28 巣箱前のサザンカ根元の雛(目を離した隙に飛び降りた?)
6/22 11:30 巣箱にとまり外をうかがう雛 6/22 11:35 サルスベリ→樋→サルスベリと移動しながら鳴く雌
6/22 11:35 巣からマンサクに飛び移った雛、近くのサザンカにも別の雛あり 6/22 11:37 サザンカから30m程離れたアパート壁面にとまった雛
6/22 11:43 巣穴に爪を掛けて外を覗く雛 6/22 11:49 半身乗り出したが引っ込み、その後動きなし
6/22 13:36  サザンカへ飛び移った最後の雛
6/22 15:39 この後30m程離れたアパート壁面へ飛び西方へ移動
メ モ
・40日にも及ぶ子育ての継続観察は、さすがに無理なので単純な行動の繰り返しの期間は時々まとまった時間を観察するだけにとどめた。
・巣立ちの日は、出来るだけ張り付いて観察したが食事やトイレなどその場を離れなければならないこともあり、巣立ちしたと思われる雛を見たのは5羽だけだった。
・シジュウカラの産卵は8〜9個とされているので、3〜4個は巣立ちを見逃したか無事に育たなかったことになる。巣箱内には殻も死骸(運び出した可能性あり)も無く実際のところは分からない。、
・巣立ち後、暫く近くの樹木内で親から餌をもらうという報告もあるが、前回も今回も巣立った日からどこかへ移動してしまった。我が家の庭木は背が低く数も少ないので天敵のカラスに対しては無防備であり、別の安全な所を見つけているのかもしれない。巣立ちの日は、これまで殆ど見掛けなかった西方向へ飛ぶ姿が頻繁に見られた。西方の安全な場所に雛が集まっていて一羽でも多く育つことを願うばかりである。
・シジュウカラ夫婦の子育てぶりを通して、その懸命な姿に改めて心を打たれたが、場に応じた鳴き声の違いや夫婦間の心のやりとりを感じさせるしぐさも興味深かった。またシジュウカラの子育てを見られる機会があったらその辺の所も詳しく見ていきたい。
・庭木の植栽や巣箱の位置などを工夫して、更にシジュウカラに好かれる環境をつくっていきたいと思っている。